夏のインターンシップ2022

今年2回目のインターンシップ「新種の微生物を見つけよう!遺伝子で紐解く微生物の種多様性」(8月31日~9月2)を実施しました。マネージメント は、PDの高部さんとLabTechの小林さん、デモは院生の藤原さんと黄さんでした。今回は学部2年から4年生まで4名の学生さんが参加してくれました。

地球上の生物の生息環境としては、上限と下限とも言える環境に住む微生物たちにはどんな種類のものがいるのか?ということで、温泉と流氷という対照的な環境から分離した単離株について、未同定だった20株ほどの16SrRNA遺伝子配列決定と分類群の特定を行いました。そのうち新種判別の基準である既知種との相同性97%以下の株は2株でした。それぞれ、次の研究対象として面白そうな菌株コレクションが新たに加わりました。

春のインターンシップ2022

恒例となったインターンシップ「新種の微生物を見つけよう!遺伝子で紐解く微生物の多様性」を4/1, 4/4, 4/5の3日間で実施しました。今回は、参加者全員が首都圏近郊からということで、初の試みとして土日を挟むスケジュールにしてみました。初日の金曜日は、あらかじめこちらで単離した菌株のコロニーピックからDNA抽出、16SrRNA遺伝子をPCR増幅して、最後に電気泳動で増幅を確認するところまででしたが、参加した学生から「自分で取ってきた菌を使いたかったです〜」というリクエストがあり「そこから始めると3日じゃできないんだよね」「でも、とりあえず何か水サンプル持ってきてくれたら、培地に播くところだけやってもらうことはできるけど?」と提案したところ、「それやりたいです!」ということで、滅菌容器を何本か渡しました。週明けの月曜日には、嬉々として週末に川とか海とかいろんな場所で取った水サンプルを持ってきてくれたので、その日はシーケンス反応からシーケンサーにセットするところまでの予定でしたが、追加でサンプルを寒天培地に播種するという最初のステップを体験してもらいました。最終日には、シーケンスデータの解析をして、新種候補を探しました。ということで、スタッフは予定外の培地作りでてんてこ舞いでしたが、週末を挟むスケジュールが功を奏して?超充実の内容となりました。

今回使った菌株は、昨年12月に能登で採取した波の花から、2月のサロマ湖海氷調査で採取した海水から、2月の白鳳丸航海で奄美沖で採取した海水からそれぞれ分離した菌株でした。23株の配列を決めて相同性検索した結果、新種判定の一つの基準となる「既知種との相同性97%以下」の株が2株見つかりました。いずれもフラボバクテリアの系統でした。そのほかにも、有望株として97%台の株が2つありました。相同性94%の株は属レベルで新しい可能性もありますのでさらに詳しく調べることになりそうです。また、97%の株は海藻由来の多糖類の分解菌として分離したものですので、こちらもさら解析されることになりそうです。

夏のインターンシップ

8月24日~26日の3日間、インターンシップ「新種の微生物を見つけよう!遺伝子で紐解く微生物の種多様性」を実施しました。特任研究員の高部さんと院生の長谷川さんが全体のマネージメントをやってくれて、春と同じ内容で、ただし違うサンプルの単離株の16SrRNA遺伝子配列を決定して、分類群の特定を行いました。今回は学部1年から4年生まで色々な大学から6名の学生さんが参加してくれました。使った単離株は、波の花、真鶴の海水、潮溜まりの海水、水月湖の海水から分離したものをそれぞれ一株ずつ選んでもらい、各自4株の遺伝子配列をサンガー法で決定しました。デモ用に解析した株も含めて、全部で33株の配列を決定し、そのうち新種判別の基準である既知種との相同性97%以下の株は5株でした。そのうち3株は真鶴沖の海水から分離したもの、2株は能登半島の曽々木海岸で採集した波の花から分離したものでした。今後、チャンスがあれば新種記載することになるかもしれません。

春のインターンシップ

大槌から戻った翌日から3日間のインターンシップを実施しました。この企画は、大気海洋科学スプリング・インターンシップということで、学部生向けに研究所での研究活動を3日間程度で体験してもらうもので、それぞれの研究室単位で様々なテーマを提供しています。私たちの微生物分野では生物遺伝子変動分野の吉澤先生と一緒に「海洋微生物の新種を探そう!」というテーマで募集して、4名の学生が参加してくれました。様々な分離源から得られた細菌株の16SrRNA遺伝子配列を決定し、相同性検索から近縁種の特定と系統解析をしてもらいました。昨年はコロナのため中止になってしまい、今年も3月まで緊急事態宣言が続いたため、対面での実施ができるかどうか危ぶまれたのですが、なんとか予定通り実施することができました。何人かの学生とスタッフに時間を使ってもらい、それなりの手間はかかりましたが「1年間オンライン授業ばかりだったので、久しぶりに実験ができて楽しかった」「微生物の実験やレクチャーを聞いて視野が広がった」と大好評でした。また、スタッフの分も含めて30株以上のシーケンスが得られたのですが、それらの中には新種の候補となりそうな株や、さらに解析したら面白そうな株もあって、そうした意味でも有意義な3日間となりました。

海外インターンシップ

8月最後の週は、海外でのインターンシッププログラムの視察のため、ベルギーの首都ブリュッセルに行ってきました。このプログラムは、東京大学とダイキン工業の産学協創協定による活動の一環として今年から始まったものです。50名の学生がいくつかのチームに分かれて、北米、欧州、中国、ベトナムなど世界各地にあるダイキン社で2~3週間の調査活動を行うというものです。大学としても初めて実施するプログラムということで、その成否を見極めるため、社会連携担当の総長補佐として視察に行ってきました。私は欧州滞在型と世界一周型のチームが、ダイキン欧州本社に滞在しているタイミングで3日間ほど、彼らの活動を見てきました。欧州では夏の気温が上昇傾向にあり、これまで冷房文化のなかったた北部地域でのエアコンの普及が進んでいることや、EUの環境政策とビジネスの関係など、専門の研究分野とは全く違うところでとても面白い見聞ができました。学生の方は、多くの希望者から選ばれただけあって、いずれも個性的かつアグレッシブなキャラクターばかりで、結構タイトなスケジュールやハードル高めの課題設定に苦労しつつも楽しそうでした。来年以降、人気のプログラムになりそうです。いつもとは違う緊張感もありつつ、見聞きするものが新鮮で楽しい視察でした。二泊四日の強行軍でしたが、色々と考えさせられることも多く得難い出張となりました。

ダイキン欧州本社

  ブリュッセル市街

ブリュッセル中央駅