キャンパスの隣の柏の葉公園にて、研究室メンバーの送別のランチ会をしました。桜はまだ一分咲きといったところでしたが、気持ちの良い天気で和やかに送別の歓談をすることができました。
東京大学グローバルインターンシッププログラム(UGIP)
9月24日(金)本郷キャンパスの鉄門記念講堂にて、ダイキン社と東大の協創活動の一環であるUGIPの成果発表会が開催されました。2年前の夏に視察に行った海外インターンシッププログラムですが、残念ながらコロナ禍のため2年連続で海外に行けず国内での実施となりました。昨年は単発のワークショップのみでしたが、今年は海外駐在社員とのオンラインミーティングなどを交えながら1ヶ月間かけてガッツリとダイキン社から提示された課題に取り組みました。サイエンスと同じく新しい価値を作るという点で、ビジネスの世界ではどうアプローチするのか興味深く勉強させていただきました。実生活との関わりの中でかつ国際情勢を踏まえながら多様な海外市場に対してどうアプローチするのかを考えるのは、サイエンスとは違った面白さがあるなあと感じました。来年は海外でのインターンシップが復活することを願います。余談ですが、高市早苗さんの自民党総裁選挙出馬会見やご著書の中で、実学重視の人材育成活動の好事例として、このプログラムを挙げられていました。日本の大学生の海外志向の弱さが指摘されている中で、同様の取り組みが広く展開されることを期待していますし、今後も微力ながら東京大学の活動をお手伝いできればと思います。
OceanDNAテック2021動画公開
6月30日に渋谷キューズで開催したイベント「OceanDNAテック2021」が、おかげさまで盛況のうちに終了しました。当日はオンラインと会場でのハイブリッド開催でしたが、時節柄か渋谷駅直結という便利な会場立地にも関わらず圧倒的にオンライン参加の多いイベントとなりました。事前登録は300名超で、実際の参加は270名ほどでした。この手のワークショップとしては、まずまずの集客ではなかったかと思います。大学関係は3割ほどで、民間企業や一般の方に多く参加いただいたようですので、自動化技術の社会実装を目指すワークショップとしては良いアピールができました。
さらに広くアピールするために、録画した動画を公開しました。こうした動画を簡単に公開できるのは、オンラインワークショップならではですね。社会実装に向けて、引き続き情報発信を続けていきます。
OceanDNAテック2021 参加登録開始!
研究プロジェクトの成果を、いかにして社会実装するか。新しいチャレンジが始まります。このイベントは,環境中での生物動態をモニタリングするツールとして急速に発展しつつある環境DNA 解析技術について,海洋環境での利用に必要な技術や実践例を企業,行政,学術等の多様な業界の皆さまに広く知っていただくことを目的としています。
イベントウェブサイト:http://ecosystem.aori.u-tokyo.ac.jp/OceanDNAtech/
渋谷QWSイベントサイト:https://shibuya-qws.com/oceandnatech2021
参加申込サイト:https://oceandnatech2021.peatix.com/
私たちの研究室では、環境中での微生物動態を解析するために、従来より海水のフィルターサンプルから抽出したDNAの解析を行ってきました。こうしたアプローチは1990年代に登場し、分子生物学的手法によって微生物の生態を研究する学問として、Molecular Microbial Ecology(分子微生物生態学)と呼ばれてきました。2000年代後半に次世代シーケンサーが登場すると、微生物群集が持つ全DNA配列を対象に網羅的にシーケンスして解析するメタゲノミクスへと発展しています。
次世代シーケンサーによるDNA配列決定の劇的な低コスト化と効率化によって、微生物だけでなく、環境中でのあらゆる生物動態をモニタリングするツールとして環境サンプル由来のDNA配列情報が利用できるようになってきました。環境中に存在する生物由来の細胞(水中では主に表皮からの剥離と糞便に由来)および微生物細胞から抽出回収されるDNAは「環境DNA」と呼ばれ、回収したDNAを解析することによって、現場に生息する生物種の特定や存在割合、多様性の把握に利用することができます。環境DNAによるモニタリングは生物個体そのものを採集しないため、サンプリングが容易でかつ野生生物に負荷の少ない利点があります。
私たちの研究室では、海洋研究開発機構や千葉県立中央博物館などと協力して、海洋における各種生物群(バクテリア,プランクトン,魚など)の動態をモニタリングできる現場型環境DNA自動分析装置と,その周辺技術の開発を行ってきました。これらの技術は、環境保全、環境影響評価、水産資源評価、下水における病原体検出、工場排水や大規模プラントの処理曹における有害微生物検出といった多様な応用展開が想定され、従来の環境調査や資源調査の枠組みを大きく変革すると共に、海洋生物モニタリングへの市民参加を可能とする技術としても注目されます。私たちが目指す社会実装のためには,当技術ニーズの掘り起こしや正確な把握,多様なステークホルダーとの協働体制を整備する必要があり、そのための活動の一環として今回のイベントを企画しました。
多くの方に参加いただけることを期待しています。
令和2年度学位記授与式
修士の学生2名の学位記授与式がありました。今年度はコロナ禍のため簡素な式典となりましたので、ささやかなお祝いをしました。野村さんは社会人として、Ghoshさんは博士課程での活躍を期待しています。おめでとう!
大学院生による研究ショーケース動画の公開
9月27日に開催した大学院進学希望者向けオンラインイベント「大気海洋研究所大学院生による研究ショーケース&ライブトーク」で使用した大学院生による研究ショーケースの動画を研究所のYoutubeチャンネル(YouTube:AORI channel )から公開しました。
「研究ショーケース」というのは、文字通り「研究を並べた陳列棚」のイメージで、研究内容を3分間に圧縮したプレゼンを順番に行うことで、短い時間に研究所での研究活動の全体像をつかむことができるようにしたものです。バラエティに富んだ分野を網羅していますので、進学希望者に限らずぜひ多くの方に見ていただければいいなと思います。
研究室集合写真2020
今年度はコロナ風邪流行のおかげで、なかなか研究室メンバーが一堂に会する機会がなく、ようやく今年度メンバーの集合写真を撮影できました。研究活動もV字回復を目指します!
大学院生による研究ショーケース&ライブトークイベント
大気海洋研究所では、9月27日(日)に大学院進学希望者向けのイベントを開催します。例年であれば、9月にはサマーインターンシップという企画で、大学院進学希望者向けに研究室での研究活動を実際に体験してもらう機会を提供しています。しかし、この状況ではなかなか実施が難しいということで、代わりにオンラインで研究所での研究活動を紹介するイベントの開催となりました。
イベントでは、現在所属する大学院生による研究紹介やライブトークを通じて、未来の自分を想像してもらえればと思います。また、希望する学生には研究室や先生とのマッチングをサポートします。
イベントサイトはこちら
退職のお祝い2 研究における先生の役割
現在は無くなってしまいましたが、当時は研究所の桟橋横の芝生広場に「スナックロポリス」というバーガー屋さんがあり、そこでランチを食べながら、あるいはコーヒーを飲みながらアザム先生とよく研究の話をしました。今やってる研究について、得られた結果の記述ではなく、ポイントを伝えることをいつも求められたのを今でも覚えています。研究をはじめて間もなく、最初に研究の話をしようとなった時に「どんな結果が出てる?」と聞かれ、「じゃあノート取ってきます」と答えたら、「ノートはいらないからポイントだけ言ってみて」みたいなことを言われ、虚を突かれた気持ちがしました。ノートが必要ということは、結果の意味について常に考えていないということなんだと気がつき、それ以降はいつも手ぶらで議論しました。
アザム先生からは、研究内容について次はこうすべきなどという話は一切ありません。結果の解釈、考え方、さらなる展開へのアイデアなど、思いつくままに1時間でも2時間でも議論します。しばしば発散気味になりますが、一方で新しいアイデアやモチベーションが湧いてきてかなり楽しい時間でした。「僕は、言いたいこと言って色々アイデアは示すけど、採用するかしないかは君次第だから」と言われたことを良く覚えています。今回の退職祝いのミーティングでは、いろんなOBからいろんな昔話が出てきましたが、アザム研究室あるいはアザム先生の特徴って何?みたいな話になった際には、みんなが同じようなことを言っていたのがとても印象的でした。
退職のお祝い1 研究留学はプライスレス
微生物ループの名付け親であるアザム先生が退職されると聞き、サンディエゴで開催されたOcean Science Meetingの後、スクリプス海洋研究所に行ってきました。今回の訪問の目的は、かつて研究留学でお世話になったアザム先生の退職を祝うミーティングに参加するためでした。
スクリプス海洋研究所は、サンディエゴのダウンタウンから海岸沿いに車で30分ほど行ったラホヤという街にあります。この街は古くからの別荘地で、太平洋に面した風光明媚な土地ですが、カリフォルニア大学サンディエゴ校を中心に、スクリプス研究所、ソーク研究所、バーナム研究所といった生物医学系の超一流の研究所や、米国大気海洋局の研究所、民間バイオテック企業などが集積する研究都市でもあります。
ミーティングは、大学院生時代にチミジン法を考案したフアマン博士の呼びかけで、各地からアザム研究室のOBが集まりました。朝から講堂に集合し、コーヒーとドーナツ片手に、シニア研究者から昔話とエピソード、そのあと研究所内のゲストハウスで地中海料理のランチビュッフェ、再び講堂に戻ってエピソードトークの続き。最後は再びゲストハウスで地ビールやワインを飲みながら昔話でワイワイ盛り上がりました。
私は2000年~2002年の2年間滞在して、BrdU法による海洋細菌の細胞レベルでの増殖測定の研究を行いました。アザム先生の知名度とオープンな人柄のせいもあり、当時の研究室にはすこぶる優秀な大学院生やポスドクに加えて、短期滞在などで国内外から様々な研究者が集まってきていました。当時のメンバーの多くは、今やそれぞれの研究グループを率いて活躍しています。こうした研究者との知己を得られたことが、アザム研究室に留学して得られたもっとも大きな財産です。彼らが面白い研究を発表しているのを見ると、こちらももっと面白い研究をしようという気持ちになります。
今回聞いたチミジン法に関するエピソードを一つ。1970年代後半、アザム先生と当時学生だったフアマン博士は、チミジン法による海水中の細菌群集の増殖速度測定を行い、その結果をある国際会議に持って行きました。同じ時期に、スウェーデンのハグストロム博士は、FDC法という顕微鏡下で分裂直後と思われる細胞を識別して、その出現頻度から全体の増殖速度を推定する方法を考案していました。アザム先生、フアマン博士、ハグストロム博士はお互いの結果が、同じような値であることを知り、自分の測定が間違っていないことを確信できたそうです。
朝から講堂に集合
同時代のラボ仲間によるエピソードトーク
研究所の桟橋「Scripps Pier」