プランクトンから雲ができる?

名古屋大学の永尾一平先生との共著論文が出版されました。三陸沖の親潮海域で、植物プランクトンの増殖とジメチルスルフォニオプロピオネイト(DMSP)、その分解産物である硫化ジメチル(DMS)の生成量との関係を報告しています。2012年に退役した学術研究船淡青丸航海による研究成果です。エルゼビアのShared Linkから50日間は無料でダウンロードできます。

Nagao, Ippei, et al. “Biogenic sulfur compounds in spring phytoplankton bloom in the western North Pacific off the coast of northern Japan.” Progress in Oceanography (2018)

DMSPは、植物プランクトンによって生成される有機硫黄化合物の一種です。その分解産物であるDMSは、海洋から大気に放出される生物起源の主要な含イオウ気体であり、大気中で酸化されて硫酸エアロゾルとなり雲の凝結核を形成します。つまり、海洋で植物プランクトンが増えると、海洋から大気へのDMSの放出量が増えて、雲の形成を促進することになります。気候が変化して環境が変わると、海洋生物や生態系は様々な影響を受けますが、反対に海洋生態系における生物活動の変化が、気候システムに影響を及ぼすこともあるのです。このように、海洋生態系と気候システムの間に存在する様々な相互作用プロセスによって、現在の地球環境が作られ、維持されていると考えられています。

海洋細菌群集は、DMSPからDMS への変換、DMSPの同化、DMSの酸化といった、複数の過程でDMSの大気放出に関わっています。私たちの研究室では、太平洋を横断する航海に参加して、こうしたDMSP の変換やDMSの生成に関わる細菌機能群の動態を解析し、その分布とDMSとの関係を報告しています。

Cui, Yingshun, et al. “Abundance and distribution of dimethylsulfoniopropionate degradation genes and the corresponding bacterial community structure at dimethyl sulfide hot spots in the tropical and subtropical pacific ocean.” Applied and environmental microbiology 81.12 (2015): 4184-4194

 

パナマのサンゴ礁研究

Azam研究室の学生のRyanと2013年から進めてきた研究が、ISME Journal電子版に掲載されました!サンゴの一斉産卵イベントに、海の細菌群集はどう応答するのか?というのがテーマです。

Guillemette, Ryan, et al. “Bacterioplankton drawdown of coral mass-spawned organic matter.” The ISME Journal (2018)

パナマのカリブ海に面した臨海実験施設にRyanが滞在し、サンゴの一斉産卵イベントに合わせてマイクロコズム実験を行った結果、卵や粘液からなる大量の有機物はわずか3日ほどで細菌群集にほとんど分解されてしまうことがわかりました。思った以上に活発で早い応答です!因みに、大量の有機物の除去に最も活躍してたのは、ロドバクター科の細菌グループでした。サンゴ礁の海を綺麗に保つ仕組みが、こういったところにもありそうです。当研究室では、BrdUを使った細菌生産測定と、活性細菌の特定に協力しました。パナマの施設ではRIが使えないということで、BrdU法が活躍しました。免疫分取とシーケンスを担当したボスドクの金子さん(現極地研)が第二著者です。

柏IIキャンパス on Friday

今日は良い天気の中、ランチタイムサッカーでストレス発散しました。柏IIキャンパスは、柏の葉キャンパス駅から、柏キャンパスに行く途中にあります。芝グランドとトレーニングジム施設があり、サッカー愛好者の憩いの場です。毎週金曜日のお昼休みは、大気海洋研究所と物性研究所のサッカー部の合同練習日。といっても、ひたすらゲームをやるだけですが。基本ハーフコートですが、時にはフルコートでやることも。平日週5日、学生、留学生、事務職員、教員、入り混じってサッカーかフットサルを毎日楽しんでます。サッカー好きなら、迷わず柏キャンパスへの進学、就職をお勧めします!

北極研究プレスリリース

5月23日(水)一昨年までJSPSの特別研究員として微生物分野で一緒に研究していた塩崎拓平さん(JAMSTEC研究員)の北極海の窒素固定に関する論文”Diazotroph community structure and the role of nitrogen fixation in the nitrogen cycle in the Chukchi Sea (western Arctic Ocean)”がLimnology and Oceanography誌に受理されました。北極海研究はホットなトピックですので、大気海洋研究所とJAMSTECからプレスリリースしました。

いくつかのメディアに取り上げていただきました。

日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP480434_T20C18A5000000/

環境展望台

http://tenbou.nies.go.jp/news/jnews/detail.php?i=24162

財経新聞

https://www.zaikei.co.jp/article/20180527/444034.html

退職記念祝賀会

5月26日(土)木暮先生の退職のお祝いを学士会館にて行いました。研究室のOBOG、現役学生、研究所やプロジェクトの関係の皆さまなどたくさんの方々に出席いただき、楽しい時間を過ごしました。記念品として、江戸切子のペアグラスを贈りました。購入した日本橋「華硝」さんによると、江戸切子を考案したガラス職人の加賀谷久兵衛(-1874)は、日本で最初に理化学実験用ガラス器具(ビーカーやらフラスコやら)を製造、販売した人物だそうです。今やペトリディッシュもガラス製からプラスチック製になってしまいましたが、ガラス器具は理系研究者なら誰もが使うものですので、木暮先生の退職をお祝いするのにピッタリな贈りものとなった気がします。