KH23-3白鳳丸航海(SOLAS-JIPS-PartI)

大気海洋相互作用をテーマとした白鳳丸航海(7/2-7/29)がいよいよスタートしました!

前半は気温7度の亜寒帯で5日間の集中観測を実施しました。現在は猛暑の東京に一時寄港中です。明日は、再び後半戦の亜熱帯での観測に向けて出港します。

新メンバー歓迎BBQ

今年度も微生物グループに新しいメンバーとして、大学院修士4名、博士1名、ポスドク2名が加わりました。

各種ミーティングが通常モードに戻りつつある中、歓迎の研究室BBQを開催しました。新メンバーと共に、海洋微生物研究をさらに盛り上げていきます!

阪倉研究室@長崎大学を訪問

連休前に、長崎大学の阪倉研究室を訪問して、魚類腸内細菌叢研究のための施設見学と打ち合わせをしてきました。

博士課程のMaiさんのテーマとして、魚類の行動生態研究が専門の長崎大学阪倉教授の協力で、フグの腸内細菌叢を調べています。フグは、美味な高級魚であると同時に、テトロドトキシンという猛毒を持つ魚としてよく知られていますが、他にも色々とユニークな特徴を持つお魚です。腸内細菌叢がどんな特徴を持っているのか?魚との関係は?他のお魚とはちょっと違う特徴が見えると面白いですが、解析結果に期待です。

 

波の花サンプリング2022 in 能登

年末恒例となった波の花サンプリングに行ってきました

今年は大雪に見舞われて、初日のフライトがキャンセルとなり、予定より1日遅れての現地入りとなりました。ただ、寒波で荒れ模様の1週間だったこともあり、波の花の方は4回出かけて3回発生と高確率でサンプリングすることができました。これまでで最も大量の発生現場にも遭遇することができました。

今回は、兼利さんが大量のTEPを含む波の花のバブリンク実験にも挑戦、bubble bursting によるエアロゾル化を再現できるか結果に注目です。

 

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嵐のサンプリング !ATGCテスト@大槌

10/410/14で大槌センターに行ってきました。文科省プロジェクトでの自動分析装置開発もいよいよ最終年度となりました。大槌での実証試験を重ねてきた自動サンプリング装置ATGC12は、完成度も高まり、実践配備間近といった感じです。これまでは、サケをターゲットにして春先にテストしてきましたが、今回は台風の中でのサンプリングを目指してこのタイミングでのテストとなりました。残念ながら、そう都合よく台風は来ませんでしたが、低気圧の通過でちょっとした嵐は捉えることができました。サンプルの分析結果を楽しみにに待ちたいと思います。ちなみに、なぜ台風かはまた別の機会に説明できればと思います。今回は時間的に余裕があったので、海水サンプルからバクテリアの分離培養のためのプレーティングをやりました。コロニーをピックアップして、次のインターンシップで同定したいと思います。

 

 

台風で「波の花」?@高知県桂浜

9月19日(月)の早朝に予定されていた「よこすか」航海の出港が、台風14号の影響で21日に延期となり、プラス2日のホテル隔離を余儀なくされていたところ、高知新聞の記者の方から「波の花」についての問い合わせのメールがありました。台風14号の影響で高知県内も風雨に見舞われたが、県有数の景勝地の桂浜で「波の花」が広範囲に発生したとのことで、大量の波の花が打ち上がり風で吹き上がる様子の写真が送られてきました。隣接する桂浜水族館の周辺が泡だらけになっている様子がNHKのWebニュースにもなっていました。どうしてこうなったのか。ネット上でいろいろな情報に当たるうちに「波の花」のサンプリングを行う様子を掲載しているこのページに行き着いたということで、「波の花」とは何で、どういう条件で発生するのか、また今回の桂浜の様子についての見解を教え欲しいとのことでした。そこで、以下のような内容を返答しました。後日掲載された高知新聞の記事では、わずか2行程度にまとめられていますので、全文をアップしておきます。

「波の花」とは何?

「波の花」は、海水が激しく攪拌されることによって生じた「泡」が集積したものです。お風呂に石鹸水を加えて作るバブルバスとか、川に洗剤が大量に流れ込んで発生する泡と基本的には同じ原理です。「波の花」現象で石鹸や洗剤(界面活性剤と呼ばれます)の役割を果たすのは、海水中に溶けている有機物です。水を激しく攪拌すると空気が取り込まれて泡が発生しますが、通常はすぐに弾けて消えてしまいます。しかし、海水中に高濃度の有機物が溶けていると、その界面活性作用によって泡が消えにくくなり、そのまま海岸に打ち寄せられて大量に集積することになります。

どんな条件で発生する?

上記メカニズムなので、発生しやすい条件は、(1)海が激しく攪拌されること(2)海水中の有機物濃度が高いこと、基本的にはこの2点が発生条件として必要と考えられます。(1)は風と波の気象条件によります。加えて、海岸の地形、例えば砂浜などフラットな地形よりも岩場など起伏の激しい地形の方が撹拌されやすいのでより泡ができやすいと考えられます。(2)については、海水中に溶けている有機物を作っているのは、水中の植物プランクトン(光合成をする単細胞の藻類)と、海岸近くに繁茂している海藻類(アラメ、カジメ、アオサなど)ですので、これらが大量にいる場所やタイミングということになります。

海藻が良く繁茂している場所や季節では、海藻が出す有機物(主に多糖類)によって、海水中の有機物濃度が高くなり、そうした場所で強風が吹くと発生しやすくなります。そのほか、影響はさほど大きくないかもしれませんが、水の温度が低下すると粘性が上昇して泡が消えにくくなりますので、夏より冬の方が発生しやすいと推測されます。私たちが冬の能登半島で観測している「波の花」はこうした要因で発生していると考えています。

その他、赤潮のように一時的に植物プランクトンが大量発生した場合にも、その細胞から分泌されたり、細胞そのものが壊れたりして、大量の有機物が水中に出てくることになり、「波の花」が発生しやすい条件になります。海外では植物プランクトンの大量発生による波の花の発生が報告されていますが、日本で赤潮と波の花が同時に発生した例があるか知りません。

今回の桂浜のケースでは、台風によって強風が吹き荒れたことが要因であることは間違いありませんが、同時に何らかの原因で海水中の有機物濃度が高かったことが、「波の花」の発生につながったと考えられます。有機物濃度が高い原因が、プランクトンの大量発生なのか、周辺の海藻の繁茂によるものなのかはわかりません。これまで見たことが無いとのことですので、これまでなかったような強い風波による撹拌があったか、たまたまプランクトンの大量発生と重なったのかもしれません。

「よこすか」航海2022

今年の深海海洋保護区の調査では、有人潜水艇「しんかい6500」の母船「よこすか」に乗船して小笠原諸島の西側に位置する西七島海嶺周辺海域に行ってきました。予定では9/19に横須賀のJAMSTEC岸壁を出港するはずでしたが、台風の影響で9/21に出港し9/28に戻ってきました。コロナ対策のために乗船4日前からホテルで隔離生活でしたので、出港延期で長いホテル生活となってしまい乗船日数よりも随分と長く感じた航海でした。出港してからも次々に発生する台風を避けつつの短い航海でしたが、なんとか目的のサンプルを採取して帰ってきました。今回は「しんかい6500」で潜航する機会はありませんでしたが、実際に母船に乗って運用しているところを見たのは初めてでしたので、色々と面白かったですし、勉強になりました。潜航した研究者によると、自らの目で直接見ると海底にある巣穴や、映像では視認が厳しそうなサイズの生き物、岩陰に隠れている生き物などがたくさん見えて、無人潜水艇のカメラで見るのとは違うということでした。次回はぜひ潜航してみたいものです。

ぶどう狩り

研究室のお手軽イベントとして、日曜日にお隣の松戸市にある加藤農園さんにぶどう狩りに行ってきました。お天気にも恵まれ、研究室メンバーとその家族も含めて総勢17名での賑やかな小旅行でした。人気のシャインマスカットに加えて、オリンピックの年に作出されたオリンピアやブラックオリンピアという珍しい品種もあり、味の違いを楽しみつつ美味しくいただきました。最寄駅の横にボーリング場があったのですが、留学生のほとんどはやったことがないということで、午前中にぶどう狩りを終えてランチを食べた後は、予定外のボーリング大会となり図らずも充実した1日となりました。

 

夏のインターンシップ2022

今年2回目のインターンシップ「新種の微生物を見つけよう!遺伝子で紐解く微生物の種多様性」(8月31日~9月2)を実施しました。マネージメント は、PDの高部さんとLabTechの小林さん、デモは院生の藤原さんと黄さんでした。今回は学部2年から4年生まで4名の学生さんが参加してくれました。

地球上の生物の生息環境としては、上限と下限とも言える環境に住む微生物たちにはどんな種類のものがいるのか?ということで、温泉と流氷という対照的な環境から分離した単離株について、未同定だった20株ほどの16SrRNA遺伝子配列決定と分類群の特定を行いました。そのうち新種判別の基準である既知種との相同性97%以下の株は2株でした。それぞれ、次の研究対象として面白そうな菌株コレクションが新たに加わりました。

春のインターンシップ2022

恒例となったインターンシップ「新種の微生物を見つけよう!遺伝子で紐解く微生物の多様性」を4/1, 4/4, 4/5の3日間で実施しました。今回は、参加者全員が首都圏近郊からということで、初の試みとして土日を挟むスケジュールにしてみました。初日の金曜日は、あらかじめこちらで単離した菌株のコロニーピックからDNA抽出、16SrRNA遺伝子をPCR増幅して、最後に電気泳動で増幅を確認するところまででしたが、参加した学生から「自分で取ってきた菌を使いたかったです〜」というリクエストがあり「そこから始めると3日じゃできないんだよね」「でも、とりあえず何か水サンプル持ってきてくれたら、培地に播くところだけやってもらうことはできるけど?」と提案したところ、「それやりたいです!」ということで、滅菌容器を何本か渡しました。週明けの月曜日には、嬉々として週末に川とか海とかいろんな場所で取った水サンプルを持ってきてくれたので、その日はシーケンス反応からシーケンサーにセットするところまでの予定でしたが、追加でサンプルを寒天培地に播種するという最初のステップを体験してもらいました。最終日には、シーケンスデータの解析をして、新種候補を探しました。ということで、スタッフは予定外の培地作りでてんてこ舞いでしたが、週末を挟むスケジュールが功を奏して?超充実の内容となりました。

今回使った菌株は、昨年12月に能登で採取した波の花から、2月のサロマ湖海氷調査で採取した海水から、2月の白鳳丸航海で奄美沖で採取した海水からそれぞれ分離した菌株でした。23株の配列を決めて相同性検索した結果、新種判定の一つの基準となる「既知種との相同性97%以下」の株が2株見つかりました。いずれもフラボバクテリアの系統でした。そのほかにも、有望株として97%台の株が2つありました。相同性94%の株は属レベルで新しい可能性もありますのでさらに詳しく調べることになりそうです。また、97%の株は海藻由来の多糖類の分解菌として分離したものですので、こちらもさら解析されることになりそうです。