能登の海に立つ─波の花調査2024

2024年も、毎年恒例となっている波の花のサンプリングを行いました。

今回は、学生たちが学位論文の追い込みの時期ということもあり、現地調査には私ひとりで参加。その他は、いつもの共同研究者の皆さんにご協力いただき、調査を実施しました。

ただし、今年の現地入りはこれまでにない難しさがありました。2023年1月の能登半島地震、そして8月の豪雨災害──その爪痕はいまだに残り、当初は中止も検討したほどです。それでも、金沢大学の共同研究者の尽力により、実施にこぎつけることができました。

現地の臨海実験施設も被害を受け、実験棟・宿泊棟ともに使用不能。今回は近くの貸家を拠点とするという異例の体制でのフィールドワークとなりました。調査地点へのアクセスも困難でした。道路の寸断や崩落により、例年のサンプリングサイトには近づけず、近くの塩田周辺の岩場で調査を行いました。現地では地殻変動による隆起が見られ、海岸線が明らかに沖へと移動しており、その変化に改めて自然の力の大きさを感じさせられました。とはいえ、岩場が広がったことにより、波の花が発生しやすい地形になりつつある印象もあります。実際、調査時には十分な発泡が観察され、安全にサンプリングを行うことができました。

臨海実験施設については、海に面した敷地が一部崩落しており、全面復旧には時間がかかる見込みです。ただ、高台にある宿泊棟は使用可能とのことで、今年のサンプル採取はそちらを拠点に行う予定です。

多くの制約がある一方で、環境変化そのものを記録する科学的意義も強く感じます。波の花の発生環境がどう変わっていくのか、今後も継続的に観察していきたいと思います。