フリーマントル近郊でスロンボライト探訪

白鳳丸のインド洋航海を終えた下船地は、西オーストラリアの港町フリーマントル。せっかくの機会なので、どこか近くで微生物好きとして心が躍る場所はないかと探してみたところ、見つけたのが「スロンボライト(Thrombolite)」の存在でした。

西オーストラリアといえば、まず思い浮かぶのがストロマトライト(Stromatolite)。これは光合成を行う微生物(主にシアノバクテリア)が堆積物を積み重ねてつくるドーム状の構造体で、地球最古の生命の痕跡として知られています。中でも世界遺産にもなっているシャークベイのストロマトライト群が有名ですが、フリーマントルからは遠く、今回は断念。

その代わりに見つけたのが、フリーマントルから車で約1時間の場所にあるLake Clifton(レイク・クリフトン)。ここでは、スロンボライトという、ストロマトライトの「親戚」ともいえる微生物構造体が見られます。ストロマトライトと違い、スロンボライトは内部構造が層状ではなく、より不規則に凝集した塊状構造。どちらもバイオフィルムを形成する微生物が堆積物を捕捉して作り上げた岩石構造で、数十億年前の生命活動を今に伝える“生きた化石”ともいえる存在です。

そこで、微生物研究者なら一度は見ておきたいと、私を含めて4人(学生3人+教員1人)でフィールドトリップに出かけました。現地では、教科書で見るような「見渡す限りのドーム群」という景観はありませんでしたが、湖畔の木道からスロンボライトを間近に観察することができ、満足度は十分。実はこのようなダイナミックな風景を望むには、乾季で水位が下がった時期に訪れるのがベストとのこと。今回は季節的に水量が多めだったようです。

帰り道は寄り道のしすぎで、レンタカー返却がギリギリになるハプニングもありましたが、それも含めて良い思い出となりました。フリーマントルに降り立つ機会があれば、定番の観光地とは一味違う、微生物視点の小旅行もおすすめです!

フリーマントル港のブルワリーにある入港中船舶の掲示板 白鳳丸の名前が!

白鳳丸KH24-3インド洋航海レポート

出航準備と船内生活(8/26〜)

2024年8月26日、白鳳丸KH24-3航海がスタートしました。
まずは船内生活のガイダンスと避難訓練。午後には、船側との打ち合わせ、そして研究者同士のミーティングも。夕方には大気チームのミーティング。大気観測は観測点到着の4時間前から開始し、EEZの外でサンプリング。航海初日から動き出します。夜は免税品の受け取り、早くも航海の空気になじんでいきました。

航海序盤:航走と準備の日々(8/27〜9/1)

序盤は航走中心の日々。揺れもあり、時折船酔いと戦いながら、観測準備を進めました。学生たちはプランクトン観測のセッティング、大気チームはサンプリング準備に忙殺。南緯35度以南の観測点は、悪天候を考慮してキャンセル。まずは赤道(St3)を目指すことに変更。移動中も、できるだけタイミングを見て波の花(SML)サンプリングを試みる計画に。途中、小さな宴会やUNO・麻雀大会で船内に笑い声があふれ、チームの一体感も高まっていきました。

中盤:観測本格スタート(9/2〜9/12)

9月に入り、いよいよ本格的な観測が開始。St3、St2、そして移動中にも研究用海水のサンプリングを実施。SMLサンプリングでは風とうねりに悩まされつつも、なんとか成果を収めました。深夜まで続く濾過作業やCTD採水、プランクトンネット観測など、ハードな日々が続きますが、夕方には夕陽を見にデッキに集まる時間もありました。グリーンフラッシュはなかなか見えなかったけれど、船上でのこうしたひとときは格別。夜は毎晩のように映画鑑賞会。バラエティ豊かなラインナップでリラックスしました。

終盤:赤道祭と航海のまとめ(9/13〜9/19)

St7、St8、St9での観測も順調に進み、深夜作業が続く中でも生物グループや大気グループが力を合わせて乗り切りました。BrdU実験の濾過、エアロゾルサンプラーの応急修理、データ処理など、細かな作業も数えきれないほど。全観測点終了後に、今回の赤道通過を祝って、恒例の赤道祭も開催。今回は海水プールを使ってのイベントとなり、少し肌寒いながらも盛り上がりました。また、フリーマントル寄港まで少し時間があったので、学生たちの発表練習も、岡本くんの発表には予想以上の好評価が集まりました。最終日は観測の成功を祝って打ち上げ会を開催、航海終了を惜しむかのように語り合いました。

【あとがき】

今回のKH24-3航海は、2018年のインド洋航海とは対照的に天候と観測スケジュールとの戦いが際立った航海でした。様々なトラブルやアクシデントもありましたが、それもすべて含めてフィールドワークの醍醐味。学生たちも、シニア研究者たちも、それぞれに成長を実感できた航海だったのではないでしょうか。

また来年は、また新たな海へ。

白鳳丸KH24-3次航海に向けてペナンへ

8月中旬に東京を出港した白鳳丸が、マレーシアのペナンに到着し、ここからいよいよ研究者が乗船します。私は23日夜に羽田を出発し、クアラルンプール経由で24日にペナン空港に到着、そのままジョージタウンの客船埠頭に向かい、2日前から停泊中の白鳳丸に乗船しました。出港は2日後でしたので、それまで街を見聞する時間がありました。客船埠頭は客船がいなかったので閑散としたものでしたが、少し歩くと繁華街があり、たくさんの観光客で賑わっていました。ジョージタウンは、街が世界遺産となっており、イギリス植民地時代のコロニアル様式の建物や、小さな間口の建物が隙間なく並び2階から伸びたひさしで回廊のようにつなっがっている独特の街並みが、異国情緒豊かな雰囲気を醸し出していました。また、土地を持たなかった中華系移民が一族単位で築いたとされる水上住宅群もとても印象的でした。市場でいただいたラクサやホッケンミーといった麺や、レストランでいただいた海鮮料理は、中華系の味付けが多く、おそらくシンガポールなどと近い感じでした。市場では当然ながらクレジットカードは使えないのですが、QRコードとスマホによる電子決済が普及しており、キャッシュレス社会への移行を実感しました。忙しかったオフィスを離れてリフレッシュしつつ、翌日からの航海に備える滞在でした

客船ターミナル 左奥に停泊中の白鳳丸

独特の建築様式の街並み

水上住宅 ジェッティ

市場のお魚

市場のフードコート

いよいよ出港!