5月初旬から相模湾で円石藻のブルーム(大増殖)が発生しています。葉山や江ノ島の海がエメラルドグリーンになっているということで、みんな不思議に思っていたようです。横浜国立大学臨海環境センターの下出先生のグループが調査をされて、Gephyrocapsa oceanicaという種類の円石藻ブルームで間違いなさそうとのことです。日本周辺海域のプランクトンブルームとしてはとても珍しい現象なのですが、本格調査ができないのが非常に残念です。
円石藻はその名前の通り、細胞の周りに円盤状の殻を持っている植物プランクトンです。この円盤が貝殻と同じ炭酸カルシウムでできているので、大量に増えると海に白いチョークを流したような状態になります。ちょうど白砂のビーチと同じような反射具合となって、海全体が少し濁った青緑色になります。大規模なブルームになると、宇宙からも海の色が変わっているのが見えます。殻の重みで深層に沈降しやすいことから、海の二酸化炭素吸収に重要なプランクトンとされており、硫化ジメチルという有機硫黄ガスの発生源になることで大気プロセスにも影響を及ぼすことが知られています。また、ドーバー海峡のWhite Cliffsは太古の昔に円石藻の殻が海に積もってできたものです。
教科書的な知識で、大西洋やベーリング海での大規模ブルームの発生は知っていましたが、日本沿岸域での発生は聞いたことがありませんでした。調べてみると、1995年5月に東京湾から相模湾にかけて大規模なブルームが発生したことが報告されていますし、2000年代には博多湾で繰り返し発生したと報告されています。横国の臨海環境センターでは、1995年から現在まで相模湾真鶴半島沖で月例の定点調査が行われていますが、今回のような円石藻ブルームが観測されたことはありませんので、実に25年ぶりの珍しい現象ということになります。
5月20日 国府津沖の海色変化