国際水圏メタゲノムシンポジウム

1123日と24日の2日間、北里大学で開催された国際水圏メタゲノムシンポジウムで講演してきました。私の発表は、先日出版されたMarine Metagenomicsに掲載したHiCEP法による微生物群集トランスクリプトーム解析(Fujimura et al. 2019)に関する内容です。私は初日の午前中早々の登壇でしたので、緊張の時間はすぐに終わって、あとはゆっくりとシンポジウムを楽しむことができました。シーケンスのスループット上昇は止まるところを知らず、どこまでも「安く、早く」なる一方ですが、結局のところ研究の良し悪しを決めるのは、アイデアとデザインだということを改めて認識しました。2日目の午後には、真核生物のイントロンと遺伝子組み換え技術の発見で1993年にノーベル医学・生理学賞を受賞されたリチャード・ロバーツ博士によるBacterial Methylomes と題する講演があり、「バクテリアの生命システムを完全に解明したい」と今だに好奇心旺盛に現役で研究されていることにとても刺激を受けました。講演後のパネルディスカッションで、ロバーツ博士が、遺伝子組換え技術に対する必要以上の危険性を煽るような行き過ぎた反対キャンペーンが、世界的な食料や健康問題解決のための技術的可能性を奪っていることに対する深い懸念を示されていたのが印象的でした。(あとで調べたら、「GMO(遺伝子組換え生物)を支持するノーベル賞受賞者からの書簡」「グリーンピース、国連、そして各国政府指導者へ」という声明が2016629日に出されており、これを主導したのがロバーツ博士のようです。)2日間を通じて、メタゲノム解析が微生物動態解析の強力なツールとなっていることを実感したシンポジウムでしたが、同時にメタゲノムデータをどう使って、どう料理するのか、解析のセンスと腕がより問われるようにもなっています。美味しくなるか、不味くなるかは、素材だけでなくて料理の腕も大事ということでしょうか。

北里研究所@白金

日本の細菌学の父 北里柴三郎博士の胸像