日本地球惑星科学連合2019大会 & “GEOFUT 19”

今週は、幕張メッセで日曜日から木曜日まで開催れていた日本地球惑星科学連合(JpGU)の大会に参加してきました。JpGUは地球惑星科学関係の国内学会が集まって組織された連合組織です。自ら公益団体として春の大会運営やニュースレター、科学雑誌の発行を行っており、学問の細分化で多くの学会組織が乱立する状況でこれらを統合する組織として設立、運営され、大きな成功を収めている例だと思います。

私が所属している日本海洋学会も、2年ほど前から春と秋の2回の年次大会のうち春の大会はJpGUに合流する形で実施しています。私としては、生物系の発表が減ったのは残念なのですが、一方で大気化学やエアロゾルに関するセッションにも参加できるので非常にメリットを感じます。また、大会規模が大きいため、ポスターフロアーで展開されている企業展示やアウトリーチがとても充実しており、お祭り気分で楽しくうろうろできるのも魅力です。

水曜日の夜は、ポスドクの菅井くんと一緒に大会参加者向けのフットサルイベントGEOFUT 19に参加してきました。チームでも個人でも参加できるのですが、昨年と同じく海洋学会チーム「Oceanographers」でエントリーしました。女子とおじさんは得点すると2点なので、張り切って参加しましたが、残念ながらおじさんは得点できませんでした。それでも、女子が得点も含めた大活躍で、最終的には1勝2敗2分で終了しました。終了時間が遅かったので、みんなと一緒に飲みに行けなかったのが残念ですが、楽しいイベントでした。秋は、富山での大会なので、しっかり準備して(もちろん発表の)、サッカー好きメンバーとの再会を期したいと思います。

アンモニア酸化古細菌Shallow Marine Cladeの意外な分布

駿河湾におけるアンモニア酸化古細菌(AOA)の鉛直分布を調べた論文が公開されました。主著者は元特任研究員の伊知地稔博士です。アンモニア酸化に関わるamoA遺伝子をマーカーにして、qPCR法で計数したDeep Marine clade(DMC)とShallow Marine clade(SMC)の2つのエコタイプの特徴的な分布を報告しています。

アンモニア酸化古細菌は、海洋における硝化過程を担う鍵生物群ですが、日本周辺海域でその分布をきちんと調べた例はほとんどありません。そうした意味で貴重なデータですが、加えてフィルターによるサイズ分画によってAOAの多くは粒子付着性ではなく自由生活性であることを明らかにしています。また、一般にSMCとDMCは、そのネーミングの通りそれぞれ表層と中深層ではっきりとした住み分けが見られ、この論文でも自由生活性群集でその傾向が綺麗に見えています。面白いのは、粒子付着性群集のパターンです。SMCの割合が中深層でもそれほど低下せずDMCと同程度の割合を保っています。これは、粒子に付着したまま表層から運ばれている、あるいは中深層でも粒子中はアンモニア濃度が高いなどの理由でSMCが生残できるニッチとなっているといった理由が考えられます。粒子付着性AOAは数的にはマイナーですが、もっと詳しく調べると、これまで知られているAOAとは違った特徴が見えるかもしれません。次の研究の種が示されています。

Minoru Ijichi, Hajime Itoh and Koji Hamasaki (2019) “Vertical distribution of particle‑associated and free‑living  ammonia‑oxidizing archaea in Suruga Bay, a deep coastal embayment of Japan” Archives of Microbiology (https://doi.org/10.1007/s00203-019-01680-6)

論文へのリンクはこちら

本論文の観測に利用した淡青丸
淡青丸船内の研究室