特任研究員のWongさんが主著の新種記載論文がInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology誌に受理されました。彼女の研究対象である海表面マイクロレイヤー(Sea surface microlayer)から分離した菌株でアルファプロテオバクテリア綱の一種です。神奈川県の三崎市にある東京大学の臨海実験施設に滞在して、油壷湾のSMLサンプルから分離したものです。これまで海洋微生物研究を牽引して来られ、今春に退職された木暮一啓先生に敬意を表して、そのお名前を種名とさせていただきました。
同属の記載種がほとんどなかったことから、新種記載をすることにしたのですが、投稿直前になって、16SrRNA遺伝子配列の相同性が99%という非常に近縁な株が記載されてしまい、一時はお蔵入りも覚悟しました。その後、気を取り直してDNA-DNAハイブリをやってみると、幸いにも相同性が53%しかなく、無事に別種として記載することができました。一般的には、16SrRNA遺伝子配列の相同性が97%以下であれば、別種の可能性が高いとされていますが、97%以上でも別種のケースがあることを実感することができました。環境サンプルのアンプリコン解析などでは、種数や多様性推定の配列クラスタリングにおける基準として97%が広く用いられています。今回のケースは、97%という基準値でのクラスタリングが種数推定値の最低ラインを意味していることを示唆しています。
Taxonomic description of Amylibacter kogurei sp. nov., a novel marine alphaproteobacterium isolated from the coastal sea surface microlayer of a marine inlet
Shu-Kuan Wong, Susumu Yoshizawa, Yu Nakajima, Marie Johanna Cuadra, Yuichi Nogi, Keiji Nakamura, Hideto Takami, Yoshitoshi Ogura, Tetsuya Hayashi, Hiroshi Xavier Chiura, and Koji Hamasaki