講演内容
- 講演者情報・講演内容
福場 辰洋 | |
講演についての Q&A | Q1. 自動核酸抽出はコンタミネーションの影響を受けやすい工程と思います。環境DNA解析に使用する核酸抽出の自動化について検討事項などありますか? → コンタミネーションは大きな問題ですが、サンプル間汚染については、並列ダイアグラムポンプにより避ける事が出来ます。人為的な汚染は、自動化でより軽減できると考えています。 Q2. 自動装置で、オスバンをダイヤフラムポンプで混和するイメージがつかないのですが、どのようにするのでしょうか? → 海水の導入ラインとは別に試薬導入ラインがあり、サンプルと同じダイアグラムポンプからオスバンやRNAlaterなどの試薬を導入できます。 Q3. 国外の自動装置の動向はどうなっているのでしょうか? → 米国のMonterey Bay Aquarium Research Institute(MBARI)で開発されたEnvironmental Sample Processor(ESP)があり、サンプル採取からDNA抽出ができる大型(ドラム缶サイズ)で高価(1000万円以上)な装置です。本プロジェクトでは、小型で安価な、より使用し易い装置を目指しています。 |
所属 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構(主任研究員) |
専門分野 | 海中計測学 マイクロ流路システム |
講演タイトル | 環境DNAサンプル自動採取装置開発の現状と自動遺伝子解析への展開 |
講演概要 | 効率的な海洋環境DNA分析を目的として、経時的サンプルの自動採取を可能にする新たな装置の開発が進行中である。現在までに、マルチスケール流体技術を応用して12サンプルを自動採取できる装置の開発と実海域試験を行ってきた。ここでは、自動遺伝子抽出機能や遺伝子検出機能の集積化に向けた研究開発の展開とあわせて紹介する。 |
関連論文 | ・Fukuba and Fujii. (2021) "Lab-on-a-chip technology for in situ combined observations in oceanography" |
兵藤 晋 | |
講演についての Q&A | Q1. 複数種類の検出のMultiplex PCRは、反応の競合などSingle plex PCRと比較した場合のデメリットはありますか?定量性はいかがでしょうか? → Single plex PCRではうまくいっていても、Multiplex PCRにした時には干渉して反応が阻害されることもあるので、組み合わせを変えるなどの条件検討が必要なことがあります。 |
所属 | 東京大学大気海洋研究所(教授) |
専門分野 | 魚類生理生態学 |
講演タイトル | 抽出法及びqPCRによる解析技術の向上 |
講演概要 | 環境DNAによる解析では、メタバーコーディングによる「どのような生き物がいるのか」を調べる方法と、「特定の生き物がどのぐらいの量いるのか」を調べる定量PCR(qPCR)法に大別できる。本講演では、qPCRでの解析を例に、フィルターからのDNA抽出とその後の定量解析でどのような技術的向上がなされてきたのかを紹介する。 |
関連論文 | ・Wong et al. (2020) "Field application of an improved protocol for environmental DNA extraction, purification, and measurement using Sterivex filter." |
平井 淳也 | |
講演についての Q&A | Q1. プランクトンは、隠蔽種も多いなど各OTUと種名の対応が魚類のMiFishのように十分判別できていないと思いますが、多様性の評価では種名と対応できていなくてもOTU数で多様度指数の評価等を行うのでしょうか?あるいは種名が判別できた種数のみを用いて評価を行うのでしょうか? → データベースが完全でないこと、隠蔽種も多く存在することから、種名まで特定できないOTUも多様性評価に用いています。 例えば、OTU1-> Calanus sp. OTU2 -> Calanidaesp.など、属や科レベルまでの対応が可能であったデータも現状では活用しています。動物プランクトンは数的に多いものでも隠蔽種が存在したり、種名の統一がなされていないものが多く存在します。そのため、遺伝子配列のレファレンスデータを追加するとともに、分類学者と共同で分類体系を整理することも非常に重要な作業です。 |
所属 | 東京大学大気海洋研究所(助教) |
専門分野 | プランクトン学・分子生態学 |
講演タイトル | 動物プランクトンのメタバーコーディング |
講演概要 | 海洋で優占し、魚類の仔稚魚期の餌としても重要な動物プランクトンを対象としたメタバーコーディング技術について概説する。また、動物プランクトンの海盆規模の多様性、生物モニタリング、魚類消化管内容物解析などの研究例についても紹介する。 |
関連論文 | ・Hirai et al. (2020) "Large-scale metabarcoding analysis of epipelagic and mesopelagic copepods in the Pacific." |
吉武 和敏 | |
所属 | 東京大学農学部(助教) |
専門分野 | バイオインフォマティクス |
講演タイトル | ハプロタイプカウントによるeDNA分析技術-HaCeD-Seq |
講演概要 | eDNAから個体数を推定することは困難だが、進化速度の速いD-loop領域に着目するとほぼ一個体ずつ異なる配列であるため、D-loopのハプロタイプをカウントすることで個体数を推定できる可能性がある。葛西臨海水族園のマグロ大水槽で行ったeDNAからの個体数推定について紹介する。 |
関連論文 | ・Yoshitake et al. (2019) "HaCeD-Seq: a Novel Method for Reliable and Easy Estimation About the Fish Population Using Haplotype Count from eDNA" |
中野 江一郎 | |
所属 | 株式会社生物技研(代表取締役) |
専門分野 | 遺伝子解析サービス |
講演タイトル | 環境DNAの解析のためのデータベース「mito 1000」について |
講演概要 | 魚類をターゲットとした環境DNAメタバーコーディング解析はこの1-2年で普及が進み、研究利用だけでなく、環境調査の一般的な手法になる一歩手前です。 次のターゲットとして底生生物や昆虫のメタバーコーディング解析の実用化を目的とした、ミトコンドリアゲノムのデータベース構築の取り組みをご紹介します。 |
関連サイト | https://gikenbio.com/dnaanalysis/ngs/environment/ |
中村 匡聡 | |
所属 | いであ株式会社(遺伝子解析室 室長) |
専門分野 | 環境DNA分析技術による環境コンサルタント |
講演タイトル | 環境DNA解析技術を用いた生物調査の取り組み事例と課題 |
講演概要 | 環境DNA解析技術を用いた生物調査は、国や地方自治体等からの受託事業として、民間企業においてもすでに実用化が始まっている。主に海洋生物を対象とした環境調査の事例をご紹介するとともに、さらなる発展に向けた課題を提示する。 |
関連サイト | https://ideacon.jp/technology/leaflet/e2-06_dna.html |
宮 正樹 | |
所属 | 千葉県立中央博物館(主任上席研究員) |
専門分野 | 分子生態学・進化系統学 |
講演タイトル | 魚類環境DNAメタバーコディング:MiFish法の概要と最新情報 |
講演概要 | 2015年に魚類環境DNAメタバーコーディング法(多種同時並列検出法)の概要を発表して以来,この技術は世界中の海や川・湖で使われるようになった。MiFish法とも呼ばれるこの技術のエッセンスを解説すると共に,MiFish法をつかってどんなことが明らかにされてきたのか最新情報を紹介する。 |
関連論文 | ・Miya et al. (2020) "MiFish metabarcoding: a high-throughput approach for simultaneous detection of multiple fish species from environmental DNA and other samples." ・Oka et al. (2021) "Environmental DNA metabarcoding for biodiversity monitoring of a highly-diverse tropical fish community in a coral-reef lagoon: Estimation of species richness and detection of habitat segregation." |
プレスリリース | ・「少量の海水を汲むだけで魚の種類がわかる イノーの海水から魚類291種を検出」 |
峰岸 有紀 | |
所属 | 東京大学大気海洋研究所(准教授) |
専門分野 | 分子生態学 |
講演タイトル | 定量PCRで探るサケ稚魚および動物プランクトンの動態 |
講演概要 | 岩手県大槌湾におけるサケ稚魚およびその餌生物である動物プランクトン3種を例に、定量PCRによる環境DNA分析技術を使って、異なる分類群の動態を同一のサンプルから明らかにした最新の研究を紹介する。 |
関連論文 | ・Minegishi et al. (2019) "Spatiotemporal distribution of juvenile chum salmon in Otsuchi Bay, Iwate, Japan, inferred from environmental DNA" |
プレスリリース | ・「降海から北方回遊へ:大槌湾内におけるサケ稚魚の時空間的分布を 環境DNA分析により解明」 |